歯周病
近年、「歯周病」という言葉をテレビなどでよく耳にします。
しかし、どうして「歯周病」がこれだけ騒がれているのか、意外に知らない方が多いと思います。
ここではまず、「歯周病とはどんな病気か」をお話しします。
歯周病とは「歯ぐき」と「歯を支えている骨」の病気です
歯周病とは、歯の表面に付着した「歯垢(プラーク)」の中にいる「歯周病菌」が歯と歯肉の間に入り込み、歯を支えている組織(歯ぐきや骨など)に炎症をもたらす感染症です。歯肉炎や、歯周炎、歯槽膿漏などを総称して「歯周病」といいます。
歯垢(プラーク)
歯と歯肉の間にたまる乳白色で粘性のある細菌のかたまりです。歯垢1㎎中に1~2億ほどの細菌がいるといわれており、 糖分を栄養として増殖します。
歯石
歯に長時間付着した歯垢が、唾液中のカルシウムと混ざって石灰化したものです。表面に凸凹がある為、細菌や歯垢が更にたまりやすくなります。
歯周ポケット
歯垢の侵入により、歯と歯肉の間の溝(歯肉溝)の深さが4mm以上になってしまった状態をいいます。
歯肉炎は、歯肉(歯茎)の炎症です。腫れて出血したり、膿がでます。しかし、それは歯肉のみに限定されていますが、放っておくとさらに病気が進み、歯の周りの組織(セメント質・歯根膜・歯槽骨)まで広がってしまいます。
これが歯周炎です。つまり、歯周病の初期が歯肉炎、より進行すると歯周炎になります。
原因は、歯の周りに頑固にくっついている歯石です。食べかすを放っておくと固くなり歯ブラシでは全くとれない歯石になってしまうのです。この歯石は細菌の固まりです。歯周病の原因菌がたくさん繁殖しています。
代表的な細菌は5種類ほどです。Aa菌、Pg菌、Bf菌、Tg菌、Pi菌です。これらの菌は口腔内を不潔にすると歯周病を引き起こします。
歯周病が恐ろしいのは単に歯だけの病気ではないことです。全身の健康状態に深刻な影響を与えることが近年明らかになってきました。糖尿病、心臓血管疾患、感染性心内膜炎、肥満などの全身の病気の原因になっていることもわかっています。健康な歯、健康な身体を維持するためにも歯周病にかからないように、口腔内を清潔に保つよう細心の注意が必要です。あなたは歯周病にかかっているのかどうか、歯周病のセルフチェックをしてみましょう。
歯周病のセルフチェック
当てはまる点数を合計してください。
1点~6点が要治療、7点~12点が
即治療ということになります。
歯周病治療の流れ
1、カウンセリング
現在の健康状態やこれまでの経緯など、今後の治療を行っていく上で参考となる情報をお聞かせください。「治療の進め方」「治療回数」「痛みについて」「保険は適応されているか?」など、症状に応じてお話しさせていただきます。
2、診査・検査
全身状態の問診、歯周組織の検査、レントゲン写真による診察を行います。 必要がある場合、投薬その他の応急処置を行います。
主な検査内容
- 歯周ポケット検査…歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の進行度合いを調べます。
- 歯ぐきの出血検査
- 歯周病菌組織の検査…歯周ポケットの中に生息している細菌を測定し、将来歯周病になりやすいかどうかを調べます。
- レントゲン検査…歯槽骨の吸収の度合いを調べます。
- 咬み合わせの検査…咬み合わせの不具合を調べます。
3、診断・治療計画の提示
検査結果をもとに治療計画を検討し、必要と思われる治療についてわかりやすくご説明します。患者様の同意が得られるまで治療は行いませんので、ご不安やご不明点がありましたら何でもご相談ください。
4、基本治療
歯周病の原因である歯垢(プラーク)と歯石を徹底的に除去します。
1.歯面の歯垢を取り除きます(ブラッシング)
はじめに、根本的な原因である歯垢(プラーク)を取り除きます。
●ブラッシング指導
当院で歯垢(プラーク)を除去することは簡単ですが、歯垢(プラーク)はすぐに付着して増えるため、毎日継続して上手に歯磨きを行う必要があります。
正しいブラッシングによって歯垢(プラーク)がつかない状態になるだけでも、歯肉の炎症はかなり治まってきます。
2.歯面の歯石を取り除きます(スケーリング)
スケーラーと呼ばれる器具を用いて歯石を取ります。
歯石の表面はザラザラしているため歯垢(プラーク)がつきやすく、さらに付着した歯垢(プラーク)が落ちにくくなっています。
この歯石を取ることで歯に歯垢(プラーク)がつきにくい状態にし、歯周病を改善させます。
歯石は一度取ってもしばらくすると再形成され、歯磨きでは取ることができません。
除去するには、当院でのクリーニングが必要です。
3.歯ぐきの中の歯石や感染したセメント質を取り除きます(ルートプレーニング)
歯面の清掃が終わったら、歯周ポケット内についた歯石などをスケーラーで削り取り、歯根の表面をきれいにします。
歯根に付着した歯石をきれいに取り除けば、歯周病の進行を抑制し、改善させることができます。
5、再評価
基本治療終了後、その治療効果を判定するために再度検査をさせていただきます。検査結果をもとに、今後の方針についてご説明いたします。
6、歯周病外科治療(必要な方のみ)
歯周病が進行している場合、スケーリングなどの基本治療では歯周ポケットの奥深くにある歯垢(プラーク)や歯石を取り除くのが難しいことがあります。その場合には各外科手術にも対応しています。
◆歯周ポケット掻爬術(新付着術)
比較的浅い歯周ポケットに対しては、歯周ポケット掻爬術(そうはじゅつ)で治療を進めます。
- 1.手術の前に麻酔を行います。
- 2.麻酔が効いてきたら、歯石を取り除きます。
- 3.炎症を起こしている組織をメスで取り除きます。
※前歯の治療などでは、術後に歯肉が露出するのを防ぐために、歯周ポケット内壁の歯肉をメスで切開してから歯石などを取り除きます。(新付着術) - 4.歯周ポケット内がきれいになったら傷口を縫合します。治療後は歯周ポケットのないきれいな歯肉に戻ります。
◆肉剥離掻爬術
基本治療を行っても歯周ポケットが残っている場合は、歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうは術)で治療を進めます。
- 1.手術の前に麻酔を行います。
- 2.麻酔が効いてきたら、歯肉を切開し剥します。
- 3.歯周ポケットの奥にある歯石や炎症を起こしている組織などを除去します。
- 4.歯肉を元に戻し、特殊なパックで傷口を覆います。
- 5.治療後は歯周ポケットのないきれいな歯肉に戻ります。
※歯肉が増殖している場合などは、増えてしまった歯肉を切除し(歯肉切除術)、歯周ポケットのないきれいな歯肉に戻します。
7、定期検診
歯周病は、一度治療をして改善されたら終わりというわけにはいきません。健康な状態を保つためには、歯周ポケットの歯垢(プラーク)の蓄積をいかに減少させるかがポイントとなります。毎日歯磨きをしていても、磨き残し等は必ずあるものです。自分では取り除くことのできない歯垢(プラーク)や歯石を除去するためにも、定期的な検診をお勧めします。
定期検診では以下の項目について確認し、歯周病の早期発見、予防に役立てています
- プラークコントロールの状態・歯周ポケットの深さの測定。
- 咬み合わせのチェック検査の結果、必要な場合はスケーリング(歯石除去)や歯面清掃を行います。